校長室より

2024年11月の記事一覧

谷川俊太郎さんに捧ぐ(校長室より No.50)

詩人の谷川俊太郎さんが、13日に御逝去されました。
謹んでお悔やみ申し上げますとともに、心から御冥福をお祈りいたします。

谷川さんは1952年に第一詩集『二十億光年の孤独』を刊行されると、まもなく、詩作と並行して歌の作詞、脚本やエッセイの執筆、評論活動などを行うようになりました。
また、「スイミー」に代表されるように、翻訳にも取り組んでおられました。

本日の下野新聞の評伝(共同通信記者・杉本新氏)には、以下のように記されています。


谷川俊太郎さんは、日常に何げない言葉で詩を書いた。
読者は共感したり、笑ったり、不思議に思ったり。
その魅力は絵本や歌詞でも同じだった。
読むと気持ちが解きほぐされる。
もし谷川俊太郎という詩人がいなかったら、私たちの世の中は今より窮屈になっていたのではないだろうか。
(中略)
詩壇に登場してから70年余り。常に第一線に立ち、言葉について考え抜いた。
詩作を巡るインタビューでは
「詩の言葉は人間の意識下の世界を探って取り出そうとするところがある。矛盾したもののただ中に生きるのが人間だから、詩ではそういうことを書きたい」と語った。
(中略)
矛盾、苦悩を抱える人生であっても、今、生きていると全身で感じ、耳を澄ますこと。
その尊さを伝える詩は、人々を励まし、勇気づけた。
「生きる喜びや、世界の肯定の仕方を考えている」とも話した。
(中略)
素朴でいて奥深い。読者に希望をもたらす。
そんな詩人を私たちは失った。
だが残された数々の言葉は、闇を照らす星のように今日も輝いている。
谷川さんがいなければ、やはり世の中は今より窮屈だったに違いない。


難解で読者も離れていった戦後の一部の現代詩に反発するように、生活に根ざした日常語に光を当て、平易な言葉で深く広い世界に誘うの谷川さんの詩
その世界に深く共感するとともに、哀悼の意を込めて大好きな詩「二十億光年の孤独」を掲載します。
生徒の皆さんも是非、谷川俊太郎さんの世界に触れてみてみてください。


二十億光年の孤独     谷川俊太郎

人類は小さな球の上で
眠り起きそして働き
ときどき火星に仲間を欲しがったりする
 
火星人は小さな球の上で
何をしてるか 僕は知らない
(或いは ネリリし キルルし ハララしているか)
しかしときどき地球に仲間を欲しがったりする
それはまったくたしかなことだ
 
万有引力とは
ひき合う孤独の力である
 
宇宙はひずんでいる
それ故みんなはもとめ合う
 
宇宙はどんどん膨らんでゆく
それ故みんなは不安である
 
二十億光年の孤独に
僕は思わずくしゃみをした