校長室より

2024年9月の記事一覧

2年連続の「観測史上最も暑い夏」と「東中SDGs宣言」(校長室より No.47)

「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉がありますが、今週に入ってやっと猛暑が落ち着き、秋の気配を感じるようになりました。
熱中症のリスクも下がり、少し安心しているところです。
昨年の夏は、全国の平均気温が1898年の統計開始以来最高となり、「観測史上最も暑い夏」となりましたが、今年も同様の平均気温を記録し、2年連続の「観測史上最も暑い夏」となってしまいました。
果たして、この猛暑は何が原因なのでしょうか。地球の過去の気候変動を基に考えてみたいと思います。


地球の大気には生命活動に必須の酸素がふんだんにあり、温室効果をもつ二酸化炭素が適度にブレンドされている。
そのため、地表の年平均気温は15℃前後で、昼夜の寒暖差も小さく、生命にとってまさに「奇跡の星」となっている。
現在は非常に穏やかな気候になっているが、地球が約46億年前に誕生してから現在に至るまで、その気候は激しく変化してきた。
◆地球は過去において複数回、赤道付近まで氷に覆われる「スノーボールアース(雪玉地球)」の時代を経験している。氷床の厚さは1000m以上にも及び、液体の水は深海底や火山周辺の地熱地帯にしか存在しなかった。反対に、恐竜の全盛期と言われる白亜紀は非常に高温で、極地方にすら氷床が存在しない「グリーンハウスアース(温室地球)」の状態であった。
◆現在は、氷河時代の比較的温暖な時期である間氷期であり、氷床はグリーンランドや南極大陸など極地方にのみ存在している。
◆気候変化の要因は様々だが、最も大きな影響力を持つのが大気中の二酸化炭素濃度である。急激な気候変動にブレーキを掛け、一定の振幅に収めているのは、大気とそれ以外の地球(海やマントルなど)との間の炭素のやりとりである。
◆しかし、近年、この抜群のフィードバックシステムにほころびが生じている。原因は、化石燃料の使用に伴う、二酸化炭素を中心とした温室効果ガスの大気中への大量放出である。間氷期には約280ppmでほぼ一定だった二酸化炭素濃度は、産業革命以降増え続け、2018年には400ppmに達している。わずか250年足らずで1.4倍に急増、この急激な二酸化炭素濃度上昇と連動するように地球の平均気温は上昇し、2017年時点で産業革命前より1℃上昇、2040年頃には、1.5℃程度の上昇になると言われている。
◆このまま温暖化が進行すると、極域にある巨大氷床の融解が進み、海面が今より10~60m上昇する可能性があり、仮に海面が60m上昇すると海岸線が真岡市付近まで来るなど、関東平野はその大部分が水没してしまう。
(参考文献:「地球46億年 気候大変動」横山祐典 著 講談社)


このように、二酸化炭素濃度の上昇に伴う地球温暖化は、産業革命以降、非常に短期間で進行し、海面上昇や気候変動等により、世界に危機的状況をもたらしつつあります。
近年の世界的な猛暑も、地球温暖化が原因である可能性が高いことが指摘されています。
このことについて、私たち大人はもちろんですが、未来を生きる生徒たちにも、自分自身の問題として意識してもらう必要があります。
本校では、各学年とも総合的な学習の時間に「SDGs」に関する調べ学習等に取り組んでいます。
今年度中には、生徒会が中心となって「東中SDGs宣言」を発出し、今自分たちができることを明らかにするととももに、問題解決に資する具体的な取組をスタートする予定です。
アメリカ先住民の言葉に、「地球は先祖から譲り受けたものではない。子孫から借りているものだ。」というものがあります。
私たちの子孫に、「奇跡の星・地球」を持続可能な状態で返せるよう、「東中SDGs宣言」とともに真岡東中は確かな一歩を踏み出します。

共生社会の実現に向けて(校長室より No.46)

本日、全校朝会(リモート)で校長講話を行いました。
主な内容は以下のとおりです。


1つ目は、9月2日のかき氷のことである。
パパさん学校応援隊の皆様の協力により、今年も全生徒にかき氷が振る舞われた。
このかき氷は、夏休み明けでストレスを感じる生徒も多いことから、皆を少しでも元気付けようと始まったもので、今年で3回目になる。
しかし、「かき氷おいしかったね。」で終わりにしないでほしい。
当日、猛暑の中1人で100杯以上のかき氷を作ってくれたことはもちろん、かき氷器を借りてくることやブロック氷の手配など、大変な手間がかかっている。
また、平日なので、パパさん学校応援隊の方々は、仕事を休んで学校まで来てくれた。
是非、これらのことに思いをはせて、感謝の気持ちを持ってほしい。
これから皆は、長い人生の中で多くの方々にお世話になり、様々な形で手助けしてもらうと思う。
そのようなときには、「感謝」の気持ちを忘れず、言葉で伝えるとともに、行動で示すことが大切。
先日のかき氷で言えば、皆さんが明るく元気いっぱいに学校生活を送ることが、何よりの恩返し。
これからも様々な支援に対する「感謝」の気持ちを忘れず、行動で恩返ししていこう。

2日目は、「中秋の名月」についてである。
昨日、9月17日は「中秋の名月」だった。
多くの人が月見を楽しんだことと思う。
中秋の名月とは、旧暦(太陰太陽暦)の8月15日の夜に見える月のことを指す。
古来、日本では「春は花、秋は月」を愛で、季節を楽しんできた。
月見は「中秋の名月」を鑑賞する伝統的な行事です。澄み渡る秋の夜空に昇る月に、人々は収穫の感謝を込めて祈り、来年の豊作を願った。
皆の自宅でも、お団子をお供えし、ススキの穂を飾り付けたところも多いのではないだろうか。
お団子は月に見立て、ススキの穂は稲穂に見立てている。
また、意外なことに、中秋の名月は必ず満月になるわけではなく、実は今日18日が満月になる。
中秋の名月と満月の日付がずれることはしばしば起こり、これは、中秋の名月は太陰太陽暦の日付(新月からの日数)で決まるのに対して、満月は、太陽、地球、月の位置関係で決まるからである。
ところで、月は季節にかかわらずいつでも見られるのに、なぜ昔から秋の月は美しいといわれるのか。
それは、秋の空気は水分量が春や夏に比べて少なく乾燥しているため、澄んだ空気が月をくっきりと夜空に映し出すからである。
今日が晴れれば、是非、秋の満月を楽しみ季節感を肌で感じてほしいと思う。

最後、3つ目は、先日閉幕したパラリンピックについての話である。
皆もよく知っているオリンピックシンボル、五輪のマークは、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカ、オセアニアの5大陸の団結とオリンピック競技大会に世界中から選手が集うことを表現している。
そして、パラリンピックにも「スリー・アギトス」と呼ばれるのシンボルロゴがある。
「アギト」とは、ラテン語で「私は動く」という意味で、困難なことがあってもあきらめずに、限界に挑戦し続けるパラリンピアンを表現している。

パラリンピックは障害者を対象として行われている国際競技大会で、4年に一度、オリンピック終了後に同じ会場を使用して開催されている。
始まりは、1948年の第14回ロンドン大会の開会式の日に、イギリスのストーク・マンデビル病院でリハビリ治療の一環として、ドイツ人医師のルートヴィヒ・グットマンにより開催された、車いす患者によるアーチェリー大会だと言われている。
当初は障害者の治療・リハビリという側面が強かったパラリンピックですが、現在はアスリートによる競技スポーツへと発展している。
出場者も「車いす使用者」から対象が広がり、「もうひとつの(Parallel)+オリンピック(Olympic)」という意味で、「パラリンピック」という公式名称も定められた。
私たちは、パラリンピック等を通して、障害を持ちながらも懸命に頑張るパラアスリートに声援を送るのはもちろん、このような機会を生かして、障害者への理解を深め、障害の有無にかかわらず様々な人々が生き生きと活躍できる「共生社会」の実現に向けて、思いを新たにする必要がある。
そのためには、障害者の問題を自分事として捉えることが何よりも大切である。
そこで、本校では今年の12月5日に「あすチャレ!スクール」を活用して、パラスポーツ体験型出前授業を実施する予定である。
視覚障害のある元パラリンピアンの高田朋枝さんに来ていただき、ゴールボールの体験を行う。
このような機会を生かして、一緒に共生社会の実現に取り組んでいこう。


私たち大人の取組はもちろん、これからの時代を担う皆さんの情熱により、共生社会が実現することを強く願っています。

だいじょうぶだよ(校長室より No.45)

昨日、9月16日(月)は、敬老の日でした。
敬老の日は、2002年までは毎年9月15日でしたが、「ハッピーマンデー制度」の導入により、「9月の第3月曜日」に変更されました。

昨日は、生徒の皆さんの中にも、おじいちゃんやおばあちゃんのお祝いを一緒に行った人がいると思います。
総務省の統計によると、65歳以上の高齢者は3625万人で、日本の全人口の約3割に当たります。
敬老の日がスタートした1966年当時の高齢者は600万人台でしたので、短期間で一気に増加したことが分かります。
今後、ますます高齢化は進んでいくことでしょう。
高齢者が住みよい世の中にしていくためには、どうすればよいでしょうか。

参考に長谷川和夫先生作の絵本「だいじょうぶだよ ーぼくのおばあちゃんー」を紹介します。
医師である長谷川先生は、日本の認知症研究の先駆けであり、第一人者です。
患者が認知症かどうかを判断する「長谷川式簡易知能評価スケール」の発案者としても有名です。
そんな長谷川先生は、自身が認知症を発症したことを公表し、当事者の目から見た認知症の実際を、講演や著書により広く世の中に発信されていました。
2021年に残念ながら永眠されましたが、長谷川先生の行動により、同じ病気に苦しむ患者さんやその家族の方々は、たくさんの希望をもらったものと思います。

「だいじょうぶだよ ーぼくのおばあちゃんー」は、認知症になったおばあちゃんとその家族の話ですが、長谷川先生の実体験がもとになっているようです。
認知症が進んだおばあちゃんが、家族での会話の席で、
「みなさん どなたですか? みなさんが だれか わからなくて…」と言います。
それに対して、孫の小さな男の子が、
「おばあちゃん、おばあちゃんは ぼくの おばあちゃんだよ。おばあちゃんが わからなくても、ぼくも ママも パパも おねちゃんも みーんな おばあちゃんのことを よーく しっているから だいじょうぶだよ。しんぱいないよ、おばあちゃん!」と声を掛けます。
それを聞いたおばあちゃんは、不安な気落ちが和らぎ、笑顔を取り戻すという内容です。

人生100年時代が到来しようとしている今、認知症の問題は避けては通れない問題です。
誰もが発症の可能性があります。
そのとき、この男の子のような声掛けが自然とできるような、そんな優しい世の中であってほしいと思います。

 

 

「挑戦」への心構え(校長室より No.44)

いよいよ今日から2学期がスタートしました。
心配された台風の影響もなく、元気いっぱいの生徒の皆さんと再会できたことをうれしく思います。

1学期の終業式では、「前へ」という言葉とともに、夏休み期間中の「新たな一歩」を皆さんに求めましたが、果たして勇気を持って一歩前に踏み出し、新しい景色に触れることができたでしょうか。2学期も是非、「前へ」進む気持ちを大切にしてほしいと思います。

第2学期始業式は、LEDに換装されて明るくなった体育館で実施しました。
式辞の主な内容は、以下のとおりです。


今日は式辞の中で、部活動のこと、2学期の期待、飛躍のためのメッセージの3つについて話す。

1つ目の部活動については、陸上部の男子選手が7月23日に行われた県総体陸上競技大会の走り高跳びで、自己ベストを大幅に更新する1m85cmを跳び、見事全国大会出場を果たした。
これは、日頃のたゆまぬ努力の成果であり、本校の歴史に新たな輝かしい1ページを刻んでくれた。
また、吹奏楽部が、夏休みに行われた栃木県吹奏楽コンクールで上位入賞を果たし、5年連続の東関東吹奏楽コンクールへの出場が決定した。
9月21日に千葉県で行われる東関東でも、上位入賞を期待している。
そして、9月19日には郡市新人陸上が、そして9月27日からは郡市新人各種大会が行われる。
3年生の頑張りに負けないよう、1・2年の活躍を大いに期待している。

2つ目は、2学期の期待についてである。
2学期は3つある学期の中でも最も長く、気候的にも過ごしやすい秋が中心だから、大きな成果が期待できる学期である。
また、ひがし野祭や駅伝フェスティバルなどの大きな行事があり、部活動も新人戦やコンクール、展覧会などが目白押しである。
行事や大会等に進んで真剣に取り組み、チャンスを逃さず、自分を大きく伸ばしてほしい。
3年生には、ひがし野祭を中心に、まさに東中の顔として中心となって活躍してくれることを期待している。
そして、何よりも来年に控えた受験に向けて確かな学力を身に付け、夢への扉を自分自身の手でしっかりと開けてほしい。
2年生は、3年生の後を受け継ぐ、大切な学期となる。
部活動もほぼ新チーム、新体制となり、生徒会役員選挙も12月に予定されている。
3年生の思いをもとに、東中のよき伝統を引き継ぎ、更に発展させる、そんな活躍を期待している。
1年生は、中学生としての土台を作り上げる大事な学期である。
土台が小さいと小さな建物しか建たないが、土台が大きくしっかりしていれば、どんな大きな建物も建てることができる。
先輩を見習いながら、その土台をしっかりと作ってほしい。

最後に3つ目。そのような大切な2学期を迎える皆に、1つのメッセージを送る。
それは「挑戦」という言葉に関することである。
将棋の羽生善治九段は、「挑戦」に関して、次のように述べている。
「何かに挑戦したら、確実に報われるのであれば、誰でも必ず挑戦するだろう。報われないかもしれないところで、同じ『情熱、気力、モチベーション』を持って継続してやるのは非常に大変なことであり、私は、それこそが才能だと思っている。」
このように、「挑戦」には成功は約束されていない。
だからこそ、相当の情熱、気力が必要であり、途中で諦めたりしない、鋼のような強い意志が必要となる。
今年で54歳になる羽生善治九段は、中学生でプロ棋士なり、19歳で初タイトル・竜王を獲得、2017年に史上初の永世七冠を達成するなど、将棋界の記録を次々と塗り替えてきた。
そして、2018年には、棋士として初めて国民栄誉賞を受賞されている。
そんな羽生善治九段の言葉だから、非常に重みがある。
皆は、これから様々なことに挑戦していくことだろう。
その際、すぐに成果が上がることはまれだなはずだ。
「こんなに頑張っているのでに、どうしてだめなんだ。」とくじけそうになることも多いと思う。
でも、簡単には諦めないでほしい。
成功をつかんだ多くの人たちは、例外なく強い意志を持って挑戦し続けてきた。
これから様々なことに挑戦していく皆が、挑戦しようと決めたときと同じ「情熱、気力、モチベーション」を持って努力を継続し、成功を手にすることを信じている。


2学期の皆さんの頑張りを期待し、楽しみにしています。