校長室より

2024年10月の記事一覧

読書の秋(校長室より No.49)

今度の日曜日、10月27日から2週間の期間で「2024年第78回読書週間」が始まります。
終戦の2年後の1947(昭和22)年、まだ戦争の傷あとが日本中のあちこちに残っているとき、「読書の力によって、平和な文化国家を創ろう」と、出版社・取次会社・書店と図書館が力をあわせ、そして新聞や放送のマスコミも一緒になり、第1回「読書週間」が開かれました。
第1回「読書週間」は11月17日から23日でした。
これはアメリカの「チルドレンズ・ブック・ウィーク」が11月16日から1週間であるのにならったものです。
各地で講演会や本に関する展示会が開かれたり、読書運動を紹介する番組が作られました。
今の10月27日から11月9日(文化の日をはさんで2週間)になったのは、第2回からです。
それから約80年、「読書週間」は日本中に広がり、日本は世界のなかでも特に「本を読む国民」の国となりました。
今年の標語とポスターは以下のとおりです。


そのこともあり、先週10月16日の全校朝会では、読書を中心に話をしました。
主な内容は、以下のとおりです。


初めに、郡市新人大会や各種コンクール等での本校生徒の活躍の様子をスライドショーで視聴、今後の更なる活躍をお願いした。

秋は、過ごしやすく何をするにもよい季節である。
今日は「読書の秋」ということで、読書に注目して話をする。
残念なことに、ここ数年読書離れが加速していて、若者はもとより大人も本を読まなくなっている。
昨年、文化庁が16歳以上を対象に行った調査では、1か月に1冊も本を読まない人の割合、つまり不読率が初めて半数を越え、62.6%となった。
この調査は5年おきに行われているが、前回調査よりも不読率は15.3ポイントも増加した。
果たして、皆さんは1か月にどれぐらい本を読んでいるだろうか。
今年度は、「学級読書の日」を設定して定期的に図書室の活用を促しているため、昨年よりは月当たりの読書冊数が増加していることと思う。

では、なぜ読書は必要なのか。
それは、読書をすることで、読解力や想像力,思考力,表現力等が養われるとともに、多くの知識を得たり、多様な文化を理解したりすることができるようになるからである。
また、文学作品に加え、自然科学・社会科学関係の書籍や新聞、図鑑等の資料を読み深めることを通じて、自ら学ぶ楽しさや知る喜びを体得し、更なる探究心や真理を求める態度が培われるからである。
もう少しイメージしやすい言葉で表現すると、読書によって自分の知らないことが明らかになり、世界が広がる。
そのことが、豊かな人生を送る上でとても大切なのだ。
厳しい話だが、中学校で義務教育は終わり、卒業後にどのような進路を選ぶかは、自分で考えなければならない。
また、成人して自分で働くようになれば、基本的には自由で、どう生きるかは自分で決める必要がある。
そのように進路や生き方を決めるときには、「大きな地図=知っている世界の広さ」と「正確な羅針盤=進むべき方向を示すもの」が必要である。
読書をすることで、地図の大きさはどんどん広がり、羅針盤はより正確なものとなっていく。
そして、最も大切なことは、その年代のときにしか得られない感動、深い気付きがあるということ。
中学や高校時代に感銘を受けた本を、大人になってから読み返しても、若いときのような感動がなく、さらりと流れてしまうことがある。
そのときしか感じられない感動や深い気付きは、特に感受性豊かな中学・高校時代に多い。
読書は後で、大人になってからすれば良いというのは大きな間違いで、今だからこそ読むべきなのだ。

最後に、私から中学生におすすめの本を3冊ほど紹介する。
1冊目は、辻村深月さんの『かがみの孤城』である。
学校に行けない7人の子供たちの再起の物語
全てがつながるラストは、明日への希望満載で、生きづらさを感じている人への素敵なプレゼントとなるはず。
2冊目は、ダニエル・キイスさんの『アルジャーノンに花束を』である。
幼児並みの知能しか持たなかったチャーリィは手術により知能を向上させる。
今まで知らなかった愛や憎しみ、喜びや孤独を知った先にあるのは果たして…涙なしには読めない名作
3冊目は、寺地はるなさんの『水を縫う』である。
主人公である手芸好きの男子高校生のまわりの人間模様から、「普通」を押し付けられることの違和感が描かれている。
そもそも普通とは何なのか。世の中の普通を踏み越えていく、清々しい家族小説である。
どの本も図書室にあるので、是非,借りて読んでみてほしい。
秋の夜長、家族皆で良書に親しまれることを期待する。

 

自然と人間(校長室より No.48)

本日、10月2日付けの下野新聞に環境省の調査結果が掲載されていました。
全国各地で自然の長期的な変化を調べたところ、里山や里地にいる鳥やチョウなどの身近な生物の個体数が急速に減っていることが分かったそうです。
中でも、スズメやオナガなど、どこにでもいる普通種の減少が深刻なようです。
同日の同紙の紙面には、元京都大学長で霊長類の研究者でもある、山極寿一氏の論説が掲載されていました。
その一部を要約します。


関野吉晴氏の映画が教えてくれる最も大切なことは、私たち現代人が自然の循環から外れた道を歩んでいる事実であろう。
動物たちが分解できない薬物や人工添加物を摂取し、消化できないプラごみを大量にまき散らし、シロアリがつかない材料で家やビルを建てる。
土壌をコンクリートで固め、化学肥料や農薬で汚染し、分解者たちを排除してしまう。
人間が循環の道を外れるどころか、自然の流れを断ち切り、生物圏を崩壊させているのだ。
都市生活はその最たるもので、映画の中に出てくる東京の玉川上水を分断する道路計画もその危惧を抱かせる。
この川は動植物たちの貴重な連携の通路である。
自分たちの便宜だけを考えて自然を改変すれば、必ず自然からのしっぺ返しを受ける。
壊れた自然は元には戻らない。
そうならないうちに、私たちの日々の営みを自然の流れに沿って見つめ直さなければならない。
地球環境が大きく変動し始めている今、自然のリサイクルは待ったなしの緊急課題だと思う。


本日の真岡市の最高気温は、31.1℃でした。
10月としては異例の暑さであり、昨日、今日と全国でも多くの地点で30℃以上の真夏日となっています。
このような急激な気候変動も、人間のわがままな日々の営みの結果かもしれません。
私たち人間は、自然の中で生かされていることを忘れてはいけないと思います。
本校では、全学年で総合的な学習の時間に、「SDGs」についての探究的な学びを進めています。
そこでの学びが、将来の地球環境保全への原動力になることを信じています。