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校長室より
叱咤激励
自分の感受性くらい
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志しにすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
これは、茨木のり子さんという方の詩です。
茨木のり子さんは、1926年に大阪で生まれました。高校時代を愛知県で過ごし、上京して現・東邦大学薬学部に入学。その在学中に空襲や勤労動員を体験し、1945年に19歳で終戦を迎えました。
戦時下で体験した飢餓と空襲の恐怖が、命を大切にする茨木さんの感受性を育んだと言われています。初めから詩を書いていたわけではなく、創作活動のスタートは劇作家でした。
1977年、彼女は代表作のひとつとなる『自分の感受性くらい』を世に出しました。
それは、かつて戦争で生活から芸術・娯楽が消えていったときに、胸中で思っていた事を詠い上げたものでした。
詩には様々な解釈がありますが、私は「時代や他人のせいにせず、しっかりと自分に向き合い努力しなさい。」という叱咤激励を感じました。
生徒の皆さんも卒業、進級を間近に控えたこの時期に、逃げずにしっかりと自分と向き合ってみましょう。
茨木のり子さんは、他にも教科書に載っている「わたしが一番きれいだったとき」や「倚(よ)りかからず」など、すばらしい詩をたくさん書いていますので、また別の機会に紹介したいと思います。
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